第50章 音姫使ったって外に音は聞こえている。
あまりのバッサリ具合に、古兵衛は面食らった顔で男を見つめる。男は冷たい視線を古兵衛へと送った。その目つきから、二人は決して友好的な関係ではない事が窺える。
「当然です。分をわきまえて下さい。我々は…」
田中「勿論、タダでとは言わねェよ。」
「?」
真剣な眼差しで言葉を返す古兵衛に、男もまた真剣に耳を傾ける。
古兵衛は自らの懐へと手を忍ばせ、先日の誘拐事件で手に入れた囚人の鍵を取り出した。
田中「これ、な~んだ?」
「!」
鍵を見た男は目を見開く。
そして考え込むようにその鍵と古兵衛とを交互に見つめた。
「・・・・・。」
田中「ね?欲しいでしょ~?」
「フッ。食えない人ですね。脱帽しました。」
得意気にクルクルと指で鍵を回す古兵衛を見て、男は思わず笑みを零す。そして古兵衛の要求を承諾した。
「いいでしょう。」
田中「アハッ♪サンキュー♪」
「とはいえ、私の一存では決められません。後日改めて連絡させて頂きます。」
田中「は~い♡」
両者間の取引はこれにて終了した。