第50章 音姫使ったって外に音は聞こえている。
地球から少し離れた宇宙空間。何処に向かっているのかは分からない宇宙船。その中を田中古兵衛はゆらりゆらりと歩いていた。
古兵衛の数歩前には天人が彼を先導するように歩いている。二人は特に会話を交わすこともなく、そして古兵衛は先日手に入れた“天使の涙(お菓子)”を片手に、口に含みながら淡々と歩を進めていた。
(田中:正直、鍵はどっちでも良かったんだけどな。あと、この菓子も。手に入りゃラッキー、なけりゃあの女を消す口実になる…。その程度だったんだが…まさかマジで手に入るとはなァ。)
この宇宙船は古兵衛を案内している天人の所有する戦艦らしい。とはいっても、この天人が艦長というわけではない。ただの案内人である。
案内人の天人は、古兵衛を艦内の一室へと案内した。古兵衛に室内へ入るよう促した後、その案内人はそそくさとその場から立ち去った。
通された薄暗い室内には男が一人いた。男は椅子に腰掛けており、古兵衛が部屋に入った事を確認すると古兵衛へと声を掛けた。
「こんにちは。田中さん…でしたっけ?」
田中「どうもォ~♡」
「どうぞこちらへ。」
男は古兵衛に自分の向かい側にある椅子に腰掛けるよう促す。テーブルを挟んで向かい合う形となった。古兵衛が椅子に腰掛けて早々、男は話を切り出した。
「で?材料は集まりましたか?」
田中「勿論♡ ば~っちり♪」
「流石ですね。やはり地球の侍は素晴らしい。では、例の代物の制作費についてですが…」
田中「それなんだけどォ~、もうちょっと安くしてくんない?」
「出来ません。」
田中「ちょ、即答かよ!?」