第50章 音姫使ったって外に音は聞こえている。
土方「おい、何の資料読んでんだ?」
近藤「うぉォォォォ!!と、トシか…吃驚させんなよ…!」
心臓が飛び出る勢いで驚く近藤。どうやら土方(ひと)が近付いてきた事すらも気付いていなかったらしい。それほどまでに真剣に資料を読み込んでいたのだ。
そしてその吃驚声に、逆に土方も驚かされたのだった。
土方「こっちが吃驚するわ!珍しいな、アンタが資料室にいるなんて。」
近藤「あ、ああ。ちょっと調べたい事があってな…。」
近藤の言葉を聞き、土方は近藤の手にしている資料に視線を落とす。資料を見て土方は目を丸くした。
土方「!! これは…!」
近藤「…ああ。葵咲の…市村家の事件の資料だ。」
『市村家惨殺事件』。約十年前の資料だ。
その資料を手にする近藤に、土方は眉根を寄せた。
土方「何かあったのか?」
近藤「この間人質になった時、田中古兵衛に言われたんだよ。」
土方「?」
近藤「市村家惨殺の主犯は…高杉晋助だとな。」
土方「なっ!?」
葵咲が誘拐され、近藤も一緒に監禁されていた先日の事件。取引材料が集まった時、古兵衛は葵咲だけを連れ出した。その際に古兵衛が近藤へと耳打ちした言葉・・・・
田中『市村家を皆殺しにしたのはァ…晋助。高杉晋助だよ。』
その話を近藤から聞いた土方は目を大きく見開き、驚きを隠せないでいる。そして一つの可能性を言葉にした。