第50章 音姫使ったって外に音は聞こえている。
先日の葵咲の誘拐事件の報告を行なう為、真選組の一部の関係者達は警察庁本部へと訪れていた。
この場へ訪れたのは五人。局長の近藤、副長の土方、そして誘拐された葵咲。それから取引の材料集めでリーダー的役割を担った十番隊隊長の原田、監察の山崎の五人だ。当初はここに一番隊隊長の総悟と二番隊隊長の永倉も出席する予定だったのだが、一番隊と二番隊は別の任務が入っており欠席となった。葵咲は今回の事件の重要参考人である為、任務を欠席して報告へと訪れる事になったのだ。
五人は松平へ一通りの報告を終え、一時解散となった。山崎、原田、葵咲の三人は今回集めた材料から何が出来るのかを検証する為、本部内にある研究室へと足を運んだ。
土方は報告会の最中には出来なかったニコチン摂取の為、一人喫煙所へ。煙草を吸い終え、土方も葵咲達の向かった研究室へと足を運ぼうとしたその時、それとは真逆の方向へと足を進める近藤の姿を見つけた。
土方「ん?あれは…近藤さん?」
いつになく深刻な顔つきで足早に歩く近藤。土方は近藤の後を追う事にした。
近藤は一人、資料室へと入っていった。珍しい。バカと資料は無縁のはずなのに。
ここは警察庁本部の資料室。これまでに起きた全ての事件の資料が格納されており、警察関係者の資料室としては江戸一の広さを誇る。すぐに近藤の後を追って室内へと入った土方だったが、近藤の姿を見失ってしまう。室内を歩き回り、本棚と本棚の間を確認しながらその姿を探す土方。
そして何やら熱心に資料を読み込んでいる近藤を見つけた。
近藤「・・・・・。」
真剣な面持ちで資料と向き合っている近藤。一体何の資料を読んでいるのだろうか。気になった土方は近藤の傍へと歩み寄り、声を掛ける事にした。