第49章 犬の散歩は主導権を握る必要がある。
屯所内を鼻歌交じりで歩く総悟。そんな珍しい彼の様子を見て、山崎が声を掛けた。
総悟「~♪」
山崎「沖田隊長、やけに上機嫌ですね。」
総悟「ん?いやぁ、どっかのバカが理想どおりにバカな行動起こして自爆してくれてるみたいでさァ。」
そう語る総悟の顔には黒い笑みが浮かんでいた。その表情を見て山崎は“どっかのバカ”が、誰を指すのかを瞬時に悟った。
山崎「まーた副長に何か仕掛けたんですか?」
山崎の問いかけに、更にどす黒く微笑む総悟。ぞっとするようなその不気味な笑顔に山崎は背筋を凍らせた。その対象が自分ではなくて良かったと心の底からほっとする。それから間もなく、屯所内で総悟を探す叫び声が聞こえてきた。
土方「総悟ォォォォォ!!てめェェェェェ!!!!!」
総悟の姿を見つけた土方は、物凄いスピードで総悟のもとへと駆けつける。そして総悟の前で立ち止まって胸倉を掴んだ。一方総悟は涼しげな顔を浮かべている。勿論、この状況の全てを理解した上で、だ。
総悟「おや土方さん。どうかしたんですかぃ?」
山崎「あわわ…。」
一触即発のこの状況に、山崎は傍で指を咥えて見ている事しか出来ない。下手に止めに入れば自分が土方の逆鱗に触れてしまいそうだ。事の事情を知らない山崎でも、それくらいの空気は読めた。
土方「コノヤロォォォ!!ハメやがったなァァァ!?」
総悟「はて。何の話ですかぃ?」
土方「とぼけんじゃねーよ!!てめっ、葵咲と近藤さんが付き合うだなんだと…!!」
なおも白を切ろうとする総悟に、土方は怒りを露にする。だが、総悟は問いただそうとする土方の発言に、冷静に言葉を返した。
総悟「俺ァ嘘なんて吐いてないですぜぃ。」
土方「あぁ!?」
そして総悟はわざとらしく右手を口元に当てて驚いたような表情を見せた。