第49章 犬の散歩は主導権を握る必要がある。
葵咲「あ!そう!そこは酷かった!確かに眠っちゃった私も悪かったけど、いくら寝てたからって怪我人放って先に帰っちゃうのは酷いよねー!?これは減点だよね!!」
土方「怪我人?」
葵咲「そうそう。さっき川沿いの公園歩いてた時、銀ちゃん…あ、万事屋さんに会ってね。定春君の散歩させてもらったんだけど、その時思いっきり頭噛まれちゃって。」
そう言って葵咲は自身の前髪をかきあげる。額の端、前髪の生え際あたりにガーゼが貼られていた。葵咲は顔にガーゼを貼って外を歩くのは恥ずかしいと思い、前髪で隠していたのだ。そして葵咲は続ける。
葵咲「近藤さんが病院連れてってくれたの。でも流血で血が足りなくなったからか眠くなっちゃってさ。病院のベッドでつい眠っちゃったんだよね。」
土方「!?」
(土方:ゆっくり出来る静かなところって病院んんんんん!?ベッドって病院のベッドかよォォォォォ!!!!!)
葵咲「で、起きたら置手紙があって。『ぐっすり眠ってるのを起こすのは悪いので先に帰ります』、だってさ。まぁ近藤さんらしいというか、優しさは伝わってきたんだけどね。もしお妙さんが同じ境遇になったら、最後までちゃんと付き添ってあげなよって帰って言わなくちゃ。」
彼女の話から察するに、公園での二人の抱擁は葵咲が怪我を負い、フラついたところを近藤が受け止め、支えたと推察される。これで土方の中で全てが繋がった。もうこれは疑いようの無い、単なる土方の大きな勘違いである。頭では分かっている。分かっているが認めたくない土方。逆に二人の仲を認めたいとさえ思い始めている。最初は近藤と葵咲の仲を認めたくないが為に動いていた今回の尾行だが、これが証明されてしまえば今日一日の自分の行動が全くの無駄に終わるではないか!いや、それだけではない。もっと認めたくないコトがある…。いや、認めてはいけない事柄が・・・・。先程の自分の行動が・・・・・!!