第49章 犬の散歩は主導権を握る必要がある。
葵咲「お妙さんへのサプライズ、上手くいくといいよねぇ。」
土方「…? サプライズ??」
受け入れを構えていた言葉と違う。予想外の話の内容に、当然の事ながら土方は固まってしまった。
葵咲「うん。今度のお妙さんの誕生日の話。今日二人でプレゼント見に行ったんだよ~。それで当日のデートコース予行演習もしてさ。もう近藤さんってばエスコート完璧!絶対女の子ならキュンとくる事、間違いなしだよ!」
土方「・・・・・え。」
酷くイヤ~な予感がする。気持ちがそわそわしてきた。その顔からはだんだんと血の気も引いてきた。
葵咲「しかも今日のお礼にって私にまでプレゼントくれて…。」
そう言って葵咲は手に持っていた手のひらサイズの紙袋を土方に見せる。そして袋の中からアロマキャンドルを取り出した。
葵咲「見て!コレ。可愛いでしょ~。私なんかにまで、そんな気を遣わなくていいのにねぇ?」
土方「・・・・・・・・・・。」
完全に言葉を失う土方。土方が呆然としてその場に立ち尽くしていると、その様子を見た葵咲が、ハッとした表情で右手を口元に当てる。
葵咲「あれ?違った??…あっ、言っちゃいけなかったかな。これ、内緒ね。近藤さんにも私から聞いたって言わないでね!」
こちらも勘違いをしているわけだが、その事には気付いていない。まぁそれは無理もない話。葵咲は今日一日、土方が“色々と勘違いをして”自分達の後を尾行していた事など知りもしないのだから。
しばらく時を止めていた土方だったが、今日の最後の二人の様子を思い出し、我に返ったように葵咲に質問を投げかけた。
土方「ちょ、ちょっと待て!お前、その、何処から帰って来た!?近藤さんが、その…先に帰って来たのは…えっと・・・・。」
流石に『二人でホテルに行ってたんだろ?』と、どストレートには質問出来ない。そして質問した後に少し後悔する土方。もしそれも予行演習として付き合った、などと言われたらどうしよう。様々な思惑と妄想が土方の頭の中を駆け巡る。どう考えてもその結論にしか至らない。だが、ここでも想定外の言葉が返された。葵咲は少し怒った様子で話し始める。