第49章 犬の散歩は主導権を握る必要がある。
土方は気持ちを整理する為にも、暫く街なかを散歩していた。だがそんな簡単に気持ちは整理出来るはずもなく、もやもやしたモノが残る。土方は抜け殻のようにぼーっとしながら歩いていた。そして今日一日、見た情景を思い出しながら考えた。それはまるで自分に言い聞かせるかのように…。
(土方:何やってんだろうな、俺は。ぴったりじゃねぇか。…認めよう、二人の仲を。近藤さんになら任せられる。葵咲を生涯かけて護ってくれる。葵咲を…幸せにしてくれる…。)
認めざるを得ない。あんな温かい空気に包まれた二人の姿を目の当たりにすれば。
そうして土方は屯所への帰路についた。屯所の近くに差し掛かった時、聞き覚えのある声が耳に届いた。
銀時「あれ、お前一人か?葵咲はどうした?」
土方「ん?」
声のする方へと目を向ければ、そこには銀時&定春・・・・と、近藤の姿を見つけた。葵咲の姿はない。土方はさっと塀の陰へと隠れた。
近藤「ああ。ぐっすり眠ってたんでな。俺だけ先に帰ってきたんだ。」
土方「!?」
予想外の言葉だ。その真意を確かめたくなるような意味合いの台詞。だがそれを聞いている銀時は特に驚く様子もなく、笑いながら言葉を返す。
銀時「おいおい、置いてきたのかよ。」
近藤「起こすのも悪いだろう。ちゃんと手紙は置いてきてるよ。」
土方「??」
淡々と進められる会話に、土方はただただ耳を傾けるしかない。その近藤らしからぬ発言に、少し頭も混乱している。二人の会話を頭の中で整理しようとしながら聞いていると、話は更に思わぬ方向へと進んでいく。銀時はニヤリと笑い、顎を掻きながら近藤に尋ねた。
銀時「で?どうだった?」
近藤「ああ。良かったよ。良い練習になった。」
土方「!?」
銀時「お前も酷い事するね~。」
近藤「おいおい、人聞きの悪い事を言うな。言っとくが、最初に提案してきたのはあいつの方だからな。自分に出来る事なら何でもしたいってな。」
銀時「で?それを上手く利用したってわけか?」
近藤「お前なぁ。」
土方「っ!!」