第48章 エスコートの基本は道路側を歩くこと。
目の前で暴れる一人と一匹を見て、近藤は呆れ眼を銀時へと向けてため息を漏らした。
近藤「…あいつは能天気でいいな。悩みの『な』の字も見当たらねぇ。」
その言葉を聞いて葵咲はクスッと笑いを漏らす。だが葵咲はそんな近藤の意見に同調するのではなく、何処か遠くを見つめながら自分の意見を述べた。
葵咲「ああ見えて、きっと色々抱えてるんじゃないかな。それは私達が知らないだけで。何もしてないように見えるけど、過去には色んな経験してるみたいだから。」
近藤「!」
葵咲「悩みのない人間なんていないよ。人と接する限り、この世で生きてる限り、誰にだって悩みはある。近藤さんだってあるでしょ?悩み。」
優しく温かいその言葉に、近藤もつられて笑みを零す。だが近藤は目を瞑って頭を振った。
近藤「俺の悩みなんてのは取るに足らんもんさ。ケツ毛ボーボーだとか、なんでこうもモテねーんだとか、くだらねー悩みばかりだよ。頭悩ます程のもんじゃない。」
自嘲するようなその言葉に、葵咲はまた首を横に振る。そして空を仰ぎ見ながら言葉を漏らした。
葵咲「確かにそれは他の人からすれば、ほんの取るに足らない小さな悩みかもしれない。人によっては悩みのうちにすら入らないかもしれない。けど、その人にとっては天地を揺るがすような大きな悩みかもしれない…。『悩み』の大きさは、他人が測って良いものじゃないって私は思うんだ。」