第48章 エスコートの基本は道路側を歩くこと。
少しの間、二人は静かに歩き、川沿いの公園へと足を踏み入れる。川の淵は遊歩道となっており、犬の散歩やジョギングをしている人など、割と多くの人が訪れていた。遊歩道の端には川に転落しないようにと柵が施されている。
近藤は柵に手を掛け、水面を眺めながら言った。
近藤「今日は風が気持ちいいな。なぁ、葵咲。」
葵咲「はい。」
葵咲の気持ちも少し落ち着いてきたようで顔色は元に戻っていた。近藤の優しい言葉に笑顔を向ける。そんな二人をここでも勿論土方は一定の距離を保ちながら様子を窺っていた。二人が穏やかに水面を眺めていると、そこに銀時が現れた。銀時は定春の散歩中である。
銀時「あれ?何やってんだお前ら。」
近藤「万事屋。」
銀時は二人に気付いて声を掛けたのだった。そしていつもと違う葵咲の姿を見て声を漏らした。
銀時「どうしたんだよ?その格好。」
葵咲「これは…かくかくしかじかで。」
銀時「いや、分かんねーよ。説明端折りすぎだろ。」
そう言われて葵咲は仕方なくこうなるに至った事情を銀時に説明した。話を聞いた銀時は眉根を寄せる。口を尖らせ、近藤を睨みながら苦言した。
銀時「…おいゴリラ。こいつに変態行為、強要してねぇだろうな?」
近藤「してねーよ!なんでそーなるんだよ!!」
話を飛躍させた銀時に近藤は激怒する。右手に硬く拳を作って反論した。一方銀時は、片眉を上げてなおも近藤を睨む。
銀時「だってよ、ストーカーゴリラといえば変態の象徴だろうが。」
近藤「誰が変態の象徴だ!俺は至って紳士です!」
銀時「おい定春、お前も何か言ってや…」
定春「ワン♪」
銀時は近藤を指差しながら、定春をけしかけようとする。粛清の意を込めて近藤を噛ませようとしたのだ。だが話半分で定春は近藤ではなく、銀時の手に噛み付いた。
銀時「おいィィィィ!!なんで俺だァァァァ!!てめっ!飯食わしてやってんのに恩を仇で返す気か!この恩知らずがァァァ!」
定春「ガウッ!」
銀時「ギャァァァァ!!」
今度は銀時の頭に噛み付く定春。当然の事ながら、銀時は叫んだ。銀時は定春から逃げだした。追いかけっこの始まりである。