第48章 エスコートの基本は道路側を歩くこと。
注文した飲み物が運ばれ、美味しそうにカフェラテをすする葵咲。暫く他愛ない雑談をした後、近藤は少し聞きづらそうに質問を投げかけた。
近藤「葵咲。ひとつ聞いても良いか?・・・・市村…“市村全左衛門”とは、どのような人だったんだ?市村家ってのは一体…?」
葵咲「!!」
近藤の言葉を聞いて、みるみる顔色が悪くなっていく葵咲。テーブルに置いたカップを握ったまま、視線を下に落とす。
葵咲「・・・・市村…は・・・・。」
言葉を搾り出そうとするが、上手く出てこない。カップを掴む手は震えていた。それを見た近藤は慌てて言葉を掛ける。
近藤「あ、いや。別に言いたくないならいいんだ。ただ、少し気になっただけだ。今のは忘れてくれ。」
葵咲「・・・・・。」
青ざめたまま押し黙る葵咲を見て、近藤は店を出ることを提案する。
近藤「そろそろ出ようか。外の風にでも当たろう。」
葵咲「すみません…。」