第48章 エスコートの基本は道路側を歩くこと。
雑貨屋を出て再び歩き出す二人。
少し歩いたところで近藤が葵咲の足を気遣って言葉を投げた。
近藤「少し休憩するか。足も疲れただろう?」
葵咲「うん、そだね。喉乾いちゃったし。」
二人は近くのカフェへと入る。女の子が好みそうな今風の可愛らしいカフェだ。店内に入り、席へと案内される二人。近藤は葵咲を奥のソファ席へ座るよう促す。始め葵咲は自分の立場上上座に座ることを遠慮したが、この日近藤は上司としてではなく一人の男として行動していた為、その遠慮を返した。葵咲も近藤を立てて、その言葉に甘える事にした。
「ご注文はお決まりでしょうか?」
近藤「葵咲、何にする?」
葵咲「んー、私はカフェラテにしようかな。」
近藤「カフェラテとコーヒーで。」
「かしこまりました。」
店員は注文を取り、メニューを下げて立ち去る。
そして近藤は袖の下から“ある物”を取り出した。
近藤「葵咲。コレ…。」
葵咲「?」
小さくラッピングされたプレゼント。葵咲がきょとんとした顔をしていると、近藤がそれを開けるよう葵咲に言葉をかける。葵咲は言われるがまま、その包みを開いた。手のひらサイズのアロマグッズ。先程雑貨屋で葵咲が気に入っていたステンドグラスの入れ物のアロマだ。
近藤「お前、コレが一番気に入ってただろう?」
葵咲「えっ!?で、でも…。」
近藤「受け取ってくれ。」
店の外から二人を眺めていた土方にもプレゼントの内容は目で確認できた。先程葵咲が店内の雑貨を見て回っている際、近藤がこっそり何かを購入していたのを土方は見ていた。それがこれだったとは。始めは受け取る事を躊躇っていた葵咲だったが、やがて笑顔でそれを受け取った。完璧すぎるともいえる近藤の行動に、土方は下唇を噛んだ。