第48章 エスコートの基本は道路側を歩くこと。
街中をブラブラする二人。葵咲は雑貨屋の前で立ち止まり、近藤の袖を引いて雑貨屋の表に並んでいる小物を指差した。
葵咲「ねぇねぇ近藤さん。見てここのお店!可愛い~!」
促されて葵咲の指す店に視線を向ける近藤。そこには様々な雑貨が並んでいた。二人は店内へと足を運ぶ。小さなぬいぐるみや置物、小物入れ、クッション、鏡、卓上の加湿器、スリッパなど多種多様の雑貨を取り揃えている店だ。中でも葵咲が惹かれたのは綺麗なガラスのアロマグッズ。ステンドグラスのような入れ物で、中で火をたけば綺麗に光ることだろう。
近藤「そういうのがいいのか?」
葵咲「女子はやっぱりこういう可愛いモノが好きだよ。」
近藤「そうか。」
葵咲の笑顔を見て近藤も優しく微笑み返す。
店内には目移りするほど可愛い物が沢山置いてある。葵咲はきょろきょろ見回り、楽しそうに声を上げた。
葵咲「あ、でもこっちの方が可愛いかな?こっちも可愛い!どれも良いなぁ~。」
近藤「フッ。」
雑貨を眺めてテンションを上げる葵咲を見て、近藤は思わず吹き出してしまう。その笑いを聞いて葵咲は頬を膨らませた。
葵咲「あっ!今笑ったでしょ!!」
近藤「いや、悪い。おかしくて笑ったわけじゃないんだ。葵咲もそういう風にはしゃいだりするんだと思ってな。」
葵咲「す、すみません…。」
近藤「そこ凹むトコじゃないけど!?」
“らしくない”と言われたと思った葵咲は、激しく肩を落とす。どんよりした空気に近藤はすぐさまツッコんだ。そして慌てて言葉を付け加えた。
近藤「…いや、俺の言い方が悪かったな。安心したんだよ。お前、いつも気を張り詰めてるだろ?」
葵咲「え?」
近藤「屯所でもそんな風に気を抜いていい。もっとお前らしくいてくれ。」
葵咲「近藤さん…。ありがとう。」
二人の間を温かい空気が包み込む。それは店の外から二人を見ていた土方にも伝わっていた。