第48章 エスコートの基本は道路側を歩くこと。
翌日。待ち合わせ時刻の十分前。近藤は家康像の前で葵咲を待っていた。そしてそれを木陰から覗き見るのは土方だ。
(土方:…何やってんだ、俺ァ。)
土方は二人の様子を見に、近藤の後を尾行(つ)けてきたのだ。待ち合わせの時刻を少し過ぎた頃、葵咲が走ってきた。
葵咲「ごめんなさい!遅くなっちゃって…。」
土方「!?」
葵咲の姿を見た土方は目を丸くする。近藤もまた、少し驚いた表情で葵咲を見つめていた。
近藤「! どうしたんだ?その格好…。」
葵咲「午前中美容院行ってたんですけど…色々あって、こんなスタイルに…。その、あの…。やっぱり変、ですよね。」
普段は地味で大人しい格好をしている葵咲。だがこの日は近藤とのデートの為に着物を新調したのか、白地にピンクの花柄の着物に身を包んで訪れたのだ。それだけじゃない。髪は美容院でのセットで巻き髪になっている。その綺麗な女の子らしい姿を見た近藤は心の底から感嘆の言葉を漏らす。
近藤「いや、見違えたよ。凄く綺麗だ。」
葵咲「あ、有難うございます…。」
褒め言葉を素直に受け取る葵咲だが、当の本人は慣れない服装と髪型に、頬を真っ赤に染めて恥ずかしがっていた。近藤はそんな葵咲を本当に可愛らしい女の子だと思った。自然と顔がほころぶ。そしてスマートにエスコートを始めた。
近藤「じゃあ行くとするか。」
葵咲「はい。」
土方「・・・・・。」
二人の暖かい雰囲気を垣間見た土方は言葉を失った。