第48章 エスコートの基本は道路側を歩くこと。
二人は場所を変え、庭へと移動。屯所内でもあまり人が来ない場所を選んだ。
総悟は鼻をかみ、気持ちを落ち着かせる。そして先程見た葵咲と近藤とのやり取りを土方に話した。話を聞いて土方もまた、目を見開いて驚愕の表情を浮かべた。
土方「は・・・!?…なっ、何言ってんだよ、総悟。んなわけ、んな事あるわけねーだろ!」
総悟「・・・・・。」
総悟の沈黙は、“それ”が真実である事、嘘ではない事を物語っていた。総悟の様子を見て、土方は口に咥えていた煙草をポロリと零す。煙草は地面に静かに落ちた。そして信じられないといった様子で眉根を寄せ、言葉を搾り出した。
土方「・・・・まっ、マジでか。そんな・・・・。」
総悟「俺ァ確かに聞いたんです。近藤さんが葵咲に…『俺と……付き合ってくれないか?』って言ってるのを・・・・!!」
土方「!!…で、葵咲が、快く承諾したって?」
総悟は何も言わず、目を伏せたまま静かに頷いた。それを見て土方は言葉を失う。その場に沈黙が下りた。暫くの沈黙の後、総悟は静かに言葉を紡いだ。
総悟「…土方さん。俺ァ降りやす。」
土方「!」
総悟「近藤さんなら…近藤さんになら、葵咲を任せられる。」
土方「総悟・・・・。」
鼻をすすり、笑顔を作る総悟。その笑顔には無理が見て取れた。土方は何とも言えないといった表情で総悟の顔をじっと見つめていた。総悟は土方と目が合ったが、すぐに目を逸らす。そして俯き加減に地面に目をやりながら苦笑を浮かべた。
総悟「・・・・すいやせんが、明日は一日休み貰えやすか?」
土方「…分かった。」