第48章 エスコートの基本は道路側を歩くこと。
葵咲「私…真選組の為にもっともっと働きたい。もっともっと、強くなりたいです。近藤さんや皆に助けてもらったこの命、皆の為に使いたい。だから…私に何か出来る事があったら何でも言って欲しいです。私に出来ることなら、何でもしたいから。」
近藤「葵咲・・・・。」
その決意は近藤にも伝わってきた。葵咲の決意の宿った瞳を見て、近藤もまた葵咲に真剣な眼差しを返す。
その時、近藤の部屋の前の廊下を総悟がたまたま通りかかった。
総悟「ん?」
部屋の中から話し声が聞こえ、総悟は襖を少し開けて中の様子を窺う。
葵咲「本当に有難うございました。じゃあ、私はこれで…。」
話が終わり、立ち上がろうとする葵咲。そんな葵咲を近藤が静かに引きとめた。
近藤「…葵咲。一つ…一つだけ、俺の我侭を…聞いてくれるか?」
葵咲「?」
近藤「嫌なら断ってもらって構わねぇ。葵咲、俺と・・・・。」
最初は興味本位で覗き見ていた総悟だが、いつになく真剣に話し合う葵咲と近藤の様子を見て、総悟もまた真剣に息を呑んでその様子を窺っていた。そしてその話の終着点を聞き、大きく目を見開いた。
総悟「・・・・!!」
その現場に土方が遭遇する。土方は総悟のようにたまたまではなく、近藤に用があって訪れたのだが、部屋の入口で佇む総悟の姿を見つけて思わず立ち止まった。
土方「ん?どうした?総悟。」
総悟「ひ、土方さん…。」
声を掛けられ振り返る総悟。その瞳には涙が浮かび上がっていた。
土方「えぇっ!?ちょ、泣いてんのか…?」
思わず引いてしまう土方。ドン引きに近い。苦笑いで総悟を凝視していると、総悟は涙を拭って土方の横を通り過ぎようとした。
総悟「…なんでもねぇです…!」
土方「あ、おい!待てよ!!どうしたんだよ?お前が泣くなんて、ただ事じゃねぇんだろ?」
こんな状態の総悟なんて今まで一度も見た事がない。土方は過ぎ去ろうとする総悟の腕を掴み、ワケを尋ねた。総悟は涙を必死で堪えながら、小さな声で答える。
総悟「・・・・っ。ここじゃ…ちょっと・・・・。」
土方「・・・・・。」