第47章 生きる事、生まれてくる事を許されない人間なんていない。
田中「くそっ!」
(葵咲:大切な人を護る為には…、大切なモノを護り通すには、時には攻撃する勇気(ちから)も必要…。この男は必ず…私が倒す・・・・!!)
決意を固めた葵咲は強かった。それは単に戦闘力が上がっただけではない。人は何かを護ろうとする時、潜在能力以上の力を引き出す事が出来るのだ。何かを護らなければならないという強い意志がそうさせる。
葵咲は一気にたたみかけ、古兵衛に大きく斬りかかった。
葵咲「だぁぁぁァァァァァ!!」
田中「ぐぁっ!!」
葵咲の攻撃を防ごうとした古兵衛の刀が一本砕けた。古兵衛は攻撃を防ぎきる事が出来ずに前身を大きく斬られる。古兵衛は砕けた刀の柄をその場に放り、後ろにフラフラとよろけて下がった。そしてビルの端へと辿り着き、柵にもたれ掛かってなんとか倒れる事無く堪える。だが、前身の損傷は酷く、前かがみになって傷口を手で押さえた。
葵咲「ハァ、ハァ、ハァ。」
田中「この女(あま)ァ…。」
古兵衛は葵咲を睨み、残るもう一本の刀を握りなおして構える。
その時、階段を駆け上がってくる足音が聞こえてきた。
田中「!」
土方「葵咲ァァァァァッ!!」
屋上の入口の扉が勢いよく開かれる。真選組や新八、神楽が駆けつけてきたのだ。
葵咲「土方さん!それにみんなも!!」
土方達は古兵衛の姿を確認すると、一斉に刀を抜いてその刃先を古兵衛へと向けた。銀時も何とか立ち上がり、木刀を構えなおした。
総悟「形勢逆転だな、田中古兵衛。」
一気に形成が悪くなった状況に古兵衛は舌打ちする。
田中「チィッ!仕方ねぇ。今回はこのへんで引いてやるよ。」
その台詞と共に、古兵衛は背にある柵へと足を掛けた。そしてくるりと身体の向きを変えて真選組や葵咲達に視線を落とす。
葵咲「!!」
田中「とりあえず欲しいものは手に入ったしなァ…。じゃあな。」
古兵衛はそのまま後ろへと倒れ、背からビルの下へと飛び降りた。
葵咲「なっ!?」
それを見た葵咲達は、古兵衛の飛び降りた場所、柵の方へと駆け寄る。
柵に手を掛けて下を覗き込むと、真っ黒いハングライダーを広げて優雅に飛ぶ古兵衛の姿があった。その姿はまるで怪盗キッ●そのものだった。いや、色が黒なので“黒版 怪盗キッ●”だろうか。