第47章 生きる事、生まれてくる事を許されない人間なんていない。
振り下ろされる刀。その攻撃を回避すべく立ち上がろうとするが、身体が全然いう事をきかない。銀時の身体は限界だった。致命傷とも言えるわき腹の傷に古兵衛から何度も重ねて攻撃を喰らった事もあるが、それ以前に大量の血を流しすぎた。出血多量である。意識があるだけでも奇跡的だった。
銀時は歯を食いしばって自分に降り注ぐ刀を見ていると、自分と刀の間に人が割り込んだ。
田中「!!」
銀時「!?」
葵咲「ぐっ!!」
古兵衛の攻撃を葵咲が右手で受け止める。葵咲は刀を手のひらで受け止めた為、その手からは血が溢れ出した。
古兵衛は一度攻撃を引いて後ろに飛び下がる。
銀時「葵咲!!何やって…!!」
葵咲「守られてばかりじゃいられない…。もう卒業するって決めたんだ。」
田中「・・・・・。」
受けた攻撃の痛みで、葵咲の手から震えは消えていた。
葵咲は右手の甲を左手でそっと包み、その決意を表すようにきゅっと握る。
葵咲「私は…誰かの背中に隠れる事から…もう卒業するって決めたから…!!」
銀時「お前…っ!」
銀時は自分を庇う葵咲の背中をじっと見つめた。恐怖や過去を振り払い、古兵衛の前に佇む葵咲。その華奢な背中がとても頼もしく見えた。
葵咲「今度は銀ちゃんが下がってて。あとは私がやる。」
田中「ハッ。その手で何が出来る?もう刀なんて握れねぇだろうが。」
嘲る古兵衛に葵咲はキッと睨みを返す。そして左手で握った刀を古兵衛に向けて言った。
葵咲「まだ、左手が残ってる。アンタなんて左手で十分よ。」
田中「…俺もナメられたもんだなァ。」
葵咲「・・・・・。」
葵咲はピクリと眉を動かした。
そして次の瞬間、今まで以上のスピードで古兵衛へと立ち向かう。
(田中:!? こいつ…!!)
速いだけじゃない。その攻撃は先程とは比べ物にならないほど重く、鋭いものとなっていた。
葵咲は間髪いれずに攻撃を繰り出し、古兵衛に反撃の隙を与えない。今度は古兵衛が防戦一方となった。