第47章 生きる事、生まれてくる事を許されない人間なんていない。
古兵衛は黒い笑みを浮かべたまま、今回の事件について隠す必要もないといった様子でこちらが訊いていない事まで得意げにペラペラと語り始めた。
田中「フッ。…そうさ。俺の目的は最初(ハナ)からそいつ一人だ。他はついででしかねぇ。そいつが吉田松陽の姪だって事を匿名で“天導衆”にチクってやったのも俺だ。」
銀時「天導衆?」
田中「奴らの一人がその女の情報を欲しがってるって聞いたんでな。」
銀時「なんで天導衆が?」
田中「さぁな。理由までは知らねぇよ。興味もねぇしな。」
本当に理由までは知らない様子の古兵衛。銀時もまた、その件にはそれ以上触れなかった為、古兵衛が会話を続ける。
田中「そして今回、幕府の姫様が狙われてるって情報も流してやった。そしたら予想通り、奴らはその女を試す方向に出た。全て俺の計算どおりさ。欲しいモンは手に入るし邪魔者は消せる…更には晋助(アイツ)に国潰しに専念させる事が出来る…!この上ねぇ仕事だよ。」
古兵衛の言葉に静かに耳を傾けていた銀時だったが、視線を地面へと落とし、深く目を瞑る。
銀時「お前の思想や目的なんざ知ったこっちゃねーが、一つだけ言わせてもらわぁ。」
田中「あぁ?」
銀時は顔を上げ、鋭い視線を古兵衛へと返した。その視線は紛れも無く、“白夜叉 坂田銀時”のモノだった。
銀時「この世には生きてちゃいけねぇ人間も、生まれてこなけりゃ良かった人間もいやしねぇんだよ。少なくとも、こいつは俺にとっちゃ必要な人間だ。誰にもそれを否定させたりはしねぇ。」
葵咲「銀ちゃん…。」
力強いその言葉に葵咲は支えられる。溢れそうになる涙を堪えながら銀時の背中をじっと見つめていた。銀時は木刀の先を古兵衛へと向ける。
銀時「てめぇは絶対に俺が許さねぇ。」
田中「フン。くだらねぇ。白夜叉ァ、いつまでも英雄気取りでデカイ面してんじゃねーよ。てめぇの時代は終わったんだ。俺がこの手で…ぶっ潰してやるよ!!」