第47章 生きる事、生まれてくる事を許されない人間なんていない。
葵咲を庇って古兵衛の攻撃を真っ向から受けた銀時は、地面へと倒れこんだ。目の前でうずくまる銀時に、葵咲は必死で呼びかける。
葵咲「銀ちゃん!銀ちゃん!!」
そんな二人より少し離れた場所から、古兵衛は見下ろすような視線を送る。そしてニヤリと不気味な笑みを浮かべながら言った。
田中「や~っぱり…計算どおり♡ 白夜叉ァ、お前なら絶対にその女を庇うと思ってたよ。」
古兵衛はわざと葵咲を攻撃したのだ。銀時が咄嗟に葵咲を庇うと見越しての攻撃だった。古兵衛の思惑通り攻撃を受けてしまった銀時だが、わき腹の傷口を押さえながらも立ち上がる。そして葵咲に心配かけまいと笑顔を作った。
銀時「心配いらねぇ。ただのかすり傷だ。」
葵咲「全然かすり傷じゃないじゃん!こんなに血が…!」
銀時の発言は明らかに単なる強がりである。本来なら意識を失う程の重症なのだ。銀時が無理をしている事は、その顔から流れ落ちる脂汗で分かった。傷口からはなおも血が溢れ出す。止まる気配のない流血に葵咲は顔を真っ青にするが、銀時は葵咲に心配かけまいと、なおも強がって見せた。
銀時「いいからお前は下がってろ。」
葵咲「銀ちゃん…。」
痛みを我慢してでも、葵咲を背に庇おうとする銀時。その姿を見て古兵衛は冷たい視線を送る。そして今までになく低い声でボソリと呟いた。
田中「…気にくわねぇ。」
銀時「あぁ?」
田中「どいつもこいつも…そんな守る価値なんて一つもねぇ女を、何でそんなに気にかけやがる?」
銀時「・・・・・。」
今までに見せた事のない雰囲気を漂わせる古兵衛。その様子を銀時は静かに窺っていた。いつものヘラヘラした掴みどころのないキャラクターは何処かへ行き、“攘夷志士 人斬り古兵衛”が姿を現していた。