第46章 心を砕くのは言葉のナイフ。
田中「そう、そしていらないお前を救い出してくれた恩人をも裏切った。自分の手で傷付けた。」
葵咲「やめて…。」
田中「お前は生きていちゃいけない人間なんだよ。」
葵咲「あ・・・・あ・・・・・。」
とうとう葵咲は刀を手から落とし、震えながら両手で耳を塞ぐ。
古兵衛は葵咲の前で立ち止まり、顔を覗きこんで更に言葉による攻撃を浴びせた。
田中「そして…今回もお前は救えない。お前の身を案じて共に人質になった近藤はここで死ぬ…!真選組も終わりだ。」
葵咲は頭を抱えてその場にくずおれる。
古兵衛はくるりと踵を返し、再びビルの端へと歩き出す。そして柵に手を掛け、ビルの下を見下ろした。その視線の先、近藤が監禁されている向かい側の建物には、ちょうど真選組が集まってきているところだった。
田中「ほら、ちょうどここに駆けつけてきた…。近藤に巻かれた爆弾、その爆発に巻き込まれて真選組の大半は爆死だ…!!そう、お前のせいで!お前は近藤ら真選組の屍の上を歩いて生きていくんだよ。」
葵咲「やめて…やめて・・・・!!」
田中「ククク。だ~いじょうぶだよ。その罪を認めた頃に俺がちゃ~んと、お前も殺してやるから…。」
古兵衛は再び葵咲の方へと向き直り、右手の刀を鞘へとしまう。そして先程の起爆装置を懐から取り出した。葵咲は必死に立ち上がろうとするが、打ち砕かれた心は簡単には戻らない。その場に座り込んで古兵衛の方へと潤んだ瞳を向けた。
田中「そう、俺は嘘が嫌いなんだ。約束どおり、近藤も今からちゃ~んと解放してやるよ。恐怖という楔からなァ・・・・!!」
葵咲「や、やめて…。やめてェェェェ!!」