第46章 心を砕くのは言葉のナイフ。
田中「ねェ。さっきの俺の質問に答えてよ。なんで一本しか持ってないの?もしかして、俺、ナメられてる?それとも…“真選組の為に本気で戦う気がない”のかなァ~?」
その言葉に思わず葵咲はカッとなって感情をむき出しにする。
葵咲「違う!戦い方を変えただけ!確かに私は昔はそうやって戦ってた。でもそれは私が弱かったから。今は昔より強くなったし、それにその戦い方じゃダメだって気付いたから。その戦法じゃ、相手も傷付けてしまう…。私が戦う理由は“護る事”。護りたいモノが護れれば、相手に傷を負わせる必要はないでしょ。」
その言葉は古兵衛に向けた言葉というよりは、自分自身に言い聞かせているようだった。
葵咲は左手を自らの胸の辺りに当て、ぐっと拳を作って下を向く。それを見た古兵衛はプッと笑いを零す。
田中「アッハハハ。アンタこそ嘘ばっかり~。本当の理由は違うでしょ?その戦い方だと、過去を思い出しちゃうんだよねぇ?大切な人を自ら傷付けてしまった忌まわしき過去をさァ…。」
葵咲「!! あなた、どこまで…!!」
誰かから聞いた情報なのか何なのかは分からないが、どこまでも自分の事を知っている古兵衛に、葵咲は背筋を凍りつかせる。顔色は血の気が引いて真っ青だ。
古兵衛は口元に笑みを浮かべたまま、ゆっくりと葵咲に近付いてくる。
田中「ねぇ。なんでアンタ、生きてんの?散々言われてきたんじゃないの?お前は“いらない”って。」
葵咲「や、やめてよ…。」
古兵衛の言葉は心の深淵をえぐる。葵咲はその言葉のナイフに立ち向かう術もなく、古兵衛を見つめたまま、ただ身体をガタガタと震わせた。