第46章 心を砕くのは言葉のナイフ。
何から何まで古兵衛の思惑通りに事が進んでいるような気がする。その事に悔しくなり、葵咲はきゅっと唇を噛んで刀を抜いた。
それを見た古兵衛は起爆装置を懐にしまい、刀を二本抜いて構える。それを見た葵咲は少し眉根を寄せたが、特に何も言わずに掛け声と共に古兵衛に向かっていった。
葵咲「ハァァァァァ!!」
古兵衛は葵咲の攻撃を軽やかにかわす。スピードは五分と五分。スピードに自信のある葵咲だったが、古兵衛も負けてはいなかった。古兵衛は長身だが、細身で身軽だ。攻撃を交わすには最適の体つきなのかもしれない。
古兵衛は葵咲の攻撃を左の刀で受け流し、そして右の刀で攻撃を仕掛ける。葵咲はその攻撃を何とか交わし、後ろに飛びのいた。
葵咲「くっ!!」
田中「あのさぁ。な~んで刀、一本なわけ~?」
葵咲「!」
古兵衛の言葉に葵咲は身体を強張らせる。その場に緊張が走った。古兵衛はニヤリと笑みを浮かべて葵咲に刀を向ける。
田中「ホントは違うよねぇ?君は二刀流。一本の刀で相手の攻撃を受け流し、もう一本の刀で攻撃を打ち込む…。そういう戦法だったはずでしょォ?」
葵咲は何も返さず沈黙を守る。その沈黙を肯定の意ととらえ、古兵衛は葵咲に向けていた刀を一度下ろして続けた。
田中「素晴らしい戦法だよね。理にかなってる。そう思ってさァ~俺も真似しちゃった♡」
ここまで口を挟まずに聞いていた葵咲だったが、首を横に振って口を開いた。
葵咲「ウソ。貴方が刀二本持ってるのは、それが理由じゃないでしょ。貴方は一本でも十分強い。」
田中「あら~?褒めてくれるんだァ?」
葵咲「私をおちょくる為に、二本持ってるんでしょ。」
田中「アハハ、バレちゃったか~。」
刀を持ったまま右手を額に当てる古兵衛。茶目っ気たっぷりといった様子で行なうその仕草に、葵咲は苛立ちを覚える。それ以上は何も言わずに古兵衛を睨みつけていると、古兵衛の方から話を振ってきた。