第45章 暗闇を照らすのは温かい光。
そして葵咲を近くにいた攘夷志士へと預ける。
田中「・・・・おい、この女連れて先行っとけ。」
「はい。」
攘夷志士に腕を引かれて歩かされる葵咲。葵咲は部屋の入口で近藤の方へと振り返り、その名を叫んだ。
葵咲「近藤さん!!」
近藤「待てお前ら!葵咲ァァァ!!」
近藤もまた、葵咲の名を叫ぶ。
入口のところで壁に背を預けていた古兵衛は、クスリと笑って近藤へと近付いてきた。
田中「お詫びといっちゃ~なんだけどォ~、代わりに一つ、良い事教えてやるよ。」
古兵衛は近藤の真ん前へとしゃがみ込み、近藤の耳元へ顔を近付けて小声で囁く。
田中「―――――。」
近藤「!? なっ!!?」
何かを囁かれた近藤は、目を見開き、驚きの表情を隠せないでいた。古兵衛は立ち上がり、近藤を見下ろす。近藤もまた古兵衛へと視線を仰いで何も言わずにただただその顔を見つめた。
田中「ククク。」
近藤「そんな…。嘘だろ・・・・?」
田中「さっきも言っただろ?俺は嘘はつかねーよ。つーか、俺がこんな嘘ついて何のメリットになる?」
腕組みをして、満足そうな顔を浮かべる古兵衛。近藤は首を横に振って言葉を搾り出した。
近藤「だったら何故…!葵咲は・・・・。」
田中「さぁ。それ以上詳しい事は俺も知らねーよ。知りたきゃ“本人”に直接聞くんだな。」
近藤「・・・・・。」
古兵衛はそれ以上は何も言わず、部屋から出て行った。部屋には攘夷志士一人もおらず、近藤一人だけが取り残される形となった。