第45章 暗闇を照らすのは温かい光。
- 近藤・葵咲サイド -
皆が無事、材料を集め終わったという事を知らない葵咲は、心配そうに顔をゆがめて空(くう)を仰ぐ。
葵咲「…みんな大丈夫かな?危険な物もあったみたいだけど、怪我とかしてないかな…。」
近藤「心配いらねぇだろ。そんなやわな奴らじゃねぇ。それはお前もよく知ってるだろ?」
葵咲「う、うん。」
そう言われて一度は頷く葵咲だったが、やはり心配な気持ちは拭えずにいた。
すると再び部屋の入口の扉が開いた。
田中「葵咲ちゃ~ん、ちょっとお出掛けしよっかァ?」
近藤・葵咲「!?」
そう言って古兵衛は葵咲の縄だけほどき、立ち上がらせる。縄をほどいたと言っても、全てほどいたわけではない。柱にくくりつけていた縄だけほどいて、爆弾はそのまま。手も後ろ手に縛られたままである。
突然の古兵衛の行動に、近藤が慌てて口を挟む。
近藤「おい待て!何処に行くつもりだ!!」
田中「真選組とおまけが材料集めて取引完了しそうだからさ~。」
“おまけ”とは言うまでもないかもしれないが、万事屋三人の事。取引が完了しそうとの言葉を聞き、その点では安心する葵咲達だが、突然の古兵衛の行動に不安が募った。当の古兵衛は鼻歌交じり。まぁ自分の欲する物が手に入る直前で浮かれる気持ちも分からなくはないが、その浮かれようは少し不気味だった。
葵咲の腕を掴んで部屋を出ようとする古兵衛を、近藤は慌てて引き止める。
近藤「なっ!ならなんで葵咲を!?話が違うだろうが!!」
田中「俺は嘘なんかついてねぇよ~?いつ誰がこの女を“ここで”解放するって言った?」
近藤「!!」
ニヤリと不敵な笑みを浮かべて言う古兵衛。揚げ足を取ったようなその台詞に、近藤はカッとなる。近藤が歯噛みしていると、古兵衛が一言付け加えた。
田中「俺は嘘はつかねぇ。ちゃ~んと無傷で開放してやるさ。勿論、犯したりもしないから安心して~。何度も言うけど、この女は俺のタイプじゃないからさァ~。」
近藤「貴様…っ!!」
飛び掛かりたくとも、近藤は拘束されたまま。怒りと焦りを抱え、じたばたする事しか出来ない。近藤が古兵衛を睨んでいると、古兵衛は何かを考え込むように近藤の顔をじっと見た。