第5章 就活するなら資格は沢山持ってた方が有利。
冷たい言葉を放たれた総悟は、呆然としながら、でも考え込むように歌舞伎町の方へと歩いてきた。
土方「ようやく目ぇ覚めたか?」
顔を上げて前に目を向けると、電柱に背を預けて腕組みしながら煙草を吸っている土方の姿があった。
土方「あの女はお前の姉貴じゃねぇんだ。だからもうあの女とは関わるな。」
総悟「アンタが市村さんをけしかけたんですかぃ?」
土方「?何の話だ?」
葵咲が自分に冷たくなったのは、土方に何か言われたせいだと思った総悟は、土方の胸倉を掴んで問い詰めた。
総悟「とぼけんな!アンタどれだけ俺から大事な物奪やぁ気がすむんだ!!」
土方「だから何の話だよ!?」
どうやら本当に土方には身に覚えのない話らしい。土方の様子を見てその事が分かった総悟は、舌打ちをして土方を放した。その時、二人の横をすれ違った通行人の会話が聞こえてきた。
「俺さっき高橋見たわ。」
「え、高橋って攘夷浪士の?」
「ああ、間違いねぇ。数人でウロウロしてたぜ。その中にゃあ女もいたな。」
「まーた何かやらかすつもりか?」
「さぁなァ。あいつ性質悪ィから関わらねぇようにしねぇと…。」
『女もいた』その言葉に嫌な予感のした土方は、すぐさまその通行人に場所を問い詰めた。
土方「おい。それ何処だ?」
「え?真選組!?おっ、大江戸信用金庫の近くで見たよ。」
土方「そうか、分かった。おい総悟、行くぞ。」
捕り物、そんな気分にはなれないと思った総悟だったが、今は勤務中だ。仕方なく土方の後を追って走り出した。