第5章 就活するなら資格は沢山持ってた方が有利。
葵咲「…お姉さんの話をする時の沖田さんが…とても輝いて見えたから。」
総悟「えっ?」
予想していなかった答えが総悟の元に届いた。驚いた表情の総悟には構わず、葵咲は続ける。
葵咲「凄く楽しそうに話して下さるから、私も楽しくて。」
総悟「楽しいならそれで良いじゃないですか。」
葵咲「でもやっぱりこのままじゃいけないなって、思ったんです。」
総悟「どうして…!」
葵咲は自分の両腕を掴んで詰め寄る総悟からは目を背け、また、掴まれた腕をそっと優しく振りほどき、下を向いたまま答えた。
葵咲「私はキャバ嬢じゃない。お話聞くだけで、楽しいだけでお金貰っちゃいけないんです。」
その発言は自分で自分を追い詰めているような雰囲気だった。まるで自分を戒めているような葵咲の姿に総悟は何も言えずに立ちすくんだ。
葵咲「ごめんなさい。この数日分のお金はお返しします。だから、もう…。」
総悟「会えないって言うんですかぃ?俺は…!」
葵咲「私は、貴方のお姉さんじゃありません!」
総悟が最後まで言い終わる前に、葵咲が叫んだ。突き放すような葵咲の言葉が総悟の胸を締め付ける。
葵咲「どんなに似てても、私は貴方のお姉さんじゃない。私を見ることで、お姉さんの影が見えるなら私と一緒にいない方がいい。余計…辛くなるでしょう。」
総悟「市村…さん…。」
葵咲は総悟の為を思い、わざとキツイ口調で言った。そして付け加えるように言葉を続けた。
葵咲「それに、今日は先約があるんです。今からお仕事なので、これで。」
総悟「あっ…。」
葵咲を引き止めようとしたが、総悟はそれ以上何も言えず、寂しそうな表情で葵咲の背中を見送った。