第45章 暗闇を照らすのは温かい光。
古兵衛にこれ以上発言させまいと必死で近藤が口を挟もうとする。
だが古兵衛はそれに構わずに、話を続けながら葵咲の方へゆっくりと歩み寄ってきた。
田中「その後引き取られた市村家の人間もみ~んな、無残に殺されちゃったもんねェ?」
近藤「!?」
田中「それもこれも、お前がいたからだろ~?」
葵咲「・・・・・。」
みるみる葵咲の顔から血の気が引いていく。何も言い返せないのは、それが真実を物語っているからのようだ。
田中「そして今度は…真選組だ。ある種才能だよ。何もしなくても、み~んな、壊れていくんだから…。ねぇ?」
葵咲「・・・・っ!!」
青ざめた顔でガタガタと震えだす葵咲に、近藤は必死に呼びかけた。
近藤「葵咲、葵咲!しっかりしろ!葵咲!!」
葵咲「! …近藤…さん・・・・。」
今度はちゃんと届いた。近藤の声が。
近藤はしっかり葵咲の目を見据えながら語りかける。
近藤「お前は疫病神なんかじゃない。」
田中「へぇ~。局長サ~ン、今自分が置かれてる状況分かってる?もうすぐ死んじゃうかもしれないんだよ?疫病神のせいで。…この女のせいでさぁ!!」
葵咲「私は…私は・・・・。」
近藤が心の深淵へと落ちそうになる葵咲の手を引けば、古兵衛が闇の中へと引きずり込もうとする。まるで綱引き状態だ。
だが、その勝負にも決着がつく。近藤が今度は古兵衛の方をしっかりと見据えながら言葉で反撃したのだ。
近藤「葵咲は疫病神なんかじゃねぇ。何故なら…。」
田中「?」
近藤「俺は死なねぇ。」
葵咲「!」
近藤「真選組は、なくならねぇからだ!」
葵咲「近藤さん…。」
暗闇に光が差し込んだ。葵咲は潤んだ瞳を近藤に向けて唇を噛んだ。近藤も葵咲へと目を向け、力強い言葉を放つ。
近藤「なくならねぇなら疫病神もクソもねぇだろ?お前は俺達をみくびりすぎだ。俺達をもっと信じろ。」
葵咲「…うん!」
もう闇に取り込まれたりはしない。葵咲はいつもの葵咲に戻り、笑顔を取り戻した。そんな二人の様子を見た古兵衛は、両手を挙げて深いため息をつく。
田中「・・・・あ~あ。しらける。俺、そういうお熱い友情ごっこ嫌いなんだよ。まっ、せいぜい信じて足掻いてみれば~。」
古兵衛は葵咲に近付いていた足を止めて踵を返し、再び部屋から出て行った。