第45章 暗闇を照らすのは温かい光。
土方がここに来た目的は二つ。
一つは合鍵を作るまでの時間稼ぎ、そしてもう一つは鍵入手の為についた嘘を、本当のようにでっち上げる為だ。鍵を入手した後、そのまま合鍵を作りに行っただけで監獄に訪れていなければ嘘だと一発でバレる。ここに来ていれば、後に何かを問われても、事件重要参考人の情報はガセだったとでも言っておけば誤魔化せる。
だがそんな土方の事情など囚人は知りもしない。興味もなかった。興味があるのは檻から出た外の世界だ。囚人の目がギラリと光る。
囚人「事情はよく分からねぇが、ここに来たのも何かの縁だ。ちょいと檻の鍵、開けてってくれねーか?」
土方「バカ言ってんじゃねーよ。出来るわけねぇだろ。」
囚人「ハハッ、やっぱ駄目か。」
先程の光る眼光とは打って変わって笑い声が上がる。だがそれもそれで不気味な雰囲気を漂わせていた。最下層に収容される極悪犯とは伊達じゃない。土方は踵を返してその場を去ろうとした。
土方「…じゃあな。」
背を向ける土方に、囚人は呼びかける。
囚人「アンタとは、また何処かで会えそうな気がするぜ。」
土方「・・・・・。」
それには特に返事はせず、土方はその場を後にした。