第5章 就活するなら資格は沢山持ってた方が有利。
万事屋でのそんな出来事から、時間は少し遡る。総悟は今日も朝から妙の家を訪れていた。勿論目的は妙ではなく葵咲である。シスコンと言っても過言ではない程、姉の事を慕っていた総悟にとって葵咲との出逢いは大変大きなものだった。総悟は神や仏の類を信じるタイプではないが、この時ばかりは神様という存在を信じたくなってしまった程だ。運命の神様というものがいたなら、きっとその神様が自分と葵咲とを引き合わせてくれたに違いない。などと、総悟自身でさえも自分らしくないと思ってしまえるような事まで考えた。
総悟「ごめんくださーい!」
総悟の声を聞いた葵咲は、玄関へと向かう。
葵咲「沖田さん…。」
総悟「今日も1日お願い出来やすか?」
毎日訪れる総悟に、葵咲は少し顔を曇らせて尋ねた。
葵咲「…どうして毎日いらっしゃるんですか?」
総悟「だからそれは…。」
葵咲「真選組だから?命を狙われているから?」
総悟の答える理由を予想して、先回りして葵咲が問い返す。
葵咲「…本当は私に依頼する必要なんかないんでしょう?」
葵咲の推測に総悟は図星といった表情だ。
葵咲「沖田さんが私より強いって事、私にも分かります。これでも色々な人と対峙してきましたから。」
この一週間、葵咲は総悟と一緒にいた事で総悟の強さを肌で感じ取っていた。特に乱闘があったわけでも、ましてや手合わせしたわけでもないが、護り屋として数多くの剣客と対峙してきた葵咲は、何となくだが分かるのだった。
総悟「…じゃあなんで、この一週間俺に付き合ってくれたんですかぃ?」
今言っている事と、この一週間の葵咲の行動に矛盾を感じ、腑に落ちなかった総悟はその理由を尋ねた。葵咲は暫く沈黙した後、その質問に答えた。