第5章 就活するなら資格は沢山持ってた方が有利。
それから約一週間が経った。万事屋には奉公先募集のチラシを見た応募者が何人か訪れたが、銀時が面接を行い、全て断っていたのだった。面接を行なう際に、その者達に書いてもらった書類(住所、氏名、年齢、生年月日、職業、女中奉公人必要理由等が記入された履歴書のようなもの)や、身分証明書等の資料を宙に放り投げながら銀時が苛立った様子で叫んだ。
銀時「だーーーっ!!なんでこう応募してくる奴らってのは胡散臭ぇ奴らばっかなんだ!?下心見え見えじゃねぇかァァァ!!」
そんな様子を傍らで見ていた新八は、銀時が放り投げた資料を拾い集めながらツッコむ。
新八「アンタも最初そんな感じだったでしょーが。」
新八のツッコミはさておき、万事屋を訪れた応募者というのは、金だけが有り余っており、その金を自分の欲求不満解消に使おうとしているような中年のおっさんばかりだったのだ。何をしているのか分からない胡散臭い会社の社長(五十代、妻子なし)や、顔に傷の入った明らかに堅気の人間ではない男(六十代後半、バツ二・孫あり)、仕事はろくにせず親の遺産だけでふらふらしながら生活している男(四十代前半、内縁の妻あり)などなど。銀時が胡散臭く思って断るのも無理はない連中ばかりだった。
新八は落ちた資料を全て拾い集めて机の上に置いた時、ふと思い出したように口を開いた。
新八「あ、そういえば銀さん。沖田さん、ここ最近葵咲さんの所へ足しげく通ってるみたいですよ。」
銀時「マジでか。」
新八「はい。昨日も一昨日も…ここんとこ毎日来てるって姉上が言ってました。」
銀時「ったく、どいつもこいつも…。」
銀時はため息を漏らし、頭をかきながら立ち上がった。そしてそのまま玄関へと向かう。
新八「ちょっと銀さん?何処行くんですか?」
銀時「パチンコ。気分転換だ。」
そう言い残して銀時は万事屋から出て行った。
新八「…もう。」
新八は呆れた顔で両手を腰にやる。『女性エイト』の鬼嫁特集を見ていた神楽は、雑誌からは目を放さずに口を開いた。
神楽「心配いらないネ。どうせ銀ちゃんのことだからそう言ってあの娘(こ)のトコ行ったに決まってるアル。」
新八「…そうだね。」
神楽にそう言われて、葵咲のところへ向かう銀時の姿を思い浮かべる事が出来た新八は、ふっと微笑んで万事屋の掃除に取り掛かった。