第1章 自分のそっくりさんは世の中に三人はいる。
その晩の事、攘夷活動を行なっていた桂は、真選組に追われていた。
「いたぞ!桂だ!!追えーーー!!」
真選組は桂を路地裏に追い詰め、睡眠作用のある霧状のガスを桂に向かって噴射した。
桂「くっ!毒ガスか!?」
もう後がなく、己の最期を覚悟した桂だったが、塀の上に現れた女から、あるものを渡された。
「桂さん、コレを…。」
女の渡した物は、どんな毒ガスをも防げる、顔を覆えるタイプのマスクだった。桂は女の準備の良さに関心をし、マスクを受け取って装着した。女は塀の上からロープを下ろし、そのロープをつたって桂の横へ飛び降りた。その時、真選組一番隊隊長である沖田総悟が、桂に向かってバズーカーを噴射したのだった。
総悟「桂ァァァァァァ!!」
ドォォォン!!激しい爆音と共に、爆撃は桂の真上の壁に見事命中し、その壁からは瓦礫の残骸が桂に向かって落ちてきた。
「危ない!! 」
素早い反射神経で女は桂を突き飛ばした。だが、少し遅かったらしく、瓦礫は女の顔面に直撃した。女もマスクで顔を覆っていた為、その瓦礫はマスクの一部、目のあたりを破壊した。
桂「すまない、大丈夫か!?」
「ええ。大丈夫です。さ、早く!」
逃げようとする桂とその女を、真選組副長、土方十四郎は呼び止め、後を追おうとした。
土方「待ちやがれ!!」
その時、壊れたマスクの隙間から、あらわになった女の目と土方の目が一瞬合った。土方は一瞬、怯んだ。その目に何故か懐かしさを感じたからだ。何故懐かしさを感じたのかは分からない。だが、何処かで見たことのあるようなその瞳に、戸惑ったのだった。
その戸惑いを女は見逃さなかった。女はその隙に煙幕を投げ、爆撃によって壊れた壁の奥へと桂と共に逃げて行ったのだった。
総悟「チィッ!逃げられちまったか…。土方さん?どうかしたんですかぃ?」
土方「…あ、いや。…何でもねぇ。」
少し動揺した土方を横目に、沖田がその理由を尋ねたが、土方は何も答えなかった。