第42章 余計な一言を言う奴は嫌われやすい。
近藤の話によると、この場にそよ姫は最初からいなかったとのこと。相手は人斬り古兵衛の異名を持つ、最低最悪の攘夷志士。予告状が送られてきて、それを無視する程バカではないということだ。
今回、葵咲に課せられた任務は現場の警備でも、そよ姫の護衛でもない。そよ姫の代わりに籠の中で待機し、古兵衛が誘拐に来た際に迎え撃つというものだった。いわゆる替え玉作戦である。葵咲は古兵衛の襲撃に備え、着物の下に真選組隊士の制服を着用。停電になったと同時に着物を脱いで戦闘態勢を整えた。
だが、その事を読んでいた古兵衛はさらにその上をいった。停電という暗闇に乗じて葵咲を連れ去って行ったらしい。
最後の方は近藤の推測だが、まぁ間違いはないだろう。
新八「じゃあその暁党の田中古兵衛って男に葵咲さんが攫われたっていうんですか?」
近藤「ああ。もしくはその一派のものだろう。…まんまとハメられた。奴は最初からそよ姫をさらう気なんてなかったんだ。恐らく最初から葵咲を誘拐するつもりだったんだんだろう…。」
その発言を聞いて、黙って聞いていた銀時が怒りを露わにする。近藤の胸ぐらを掴んで叫んだ。
銀時「てめーら何やってんだよ!!分かってたんだろ!?何でみすみす連れ去られちまうんだよ!!」
近藤「ぐっ…。」
これには近藤は返す言葉もない。田中古兵衛の襲撃がある事は分かっていた。なのに葵咲を守る事が出来なかったのだから。
悔しそうに顔を伏せる近藤。そんな二人の様子を見て、総悟が銀時の腕を掴んで宥めるように割って入る。