第41章 超長距離移民船団はみんなの憧れ。
支度を整え、戻ってきた山崎。その身は女性物の着物に包まれている。薄いオレンジ色に赤い花柄の可愛らしい着物だ。髪型は二つに分けて少し高めの位置でくくられているツインテール。勿論ヅラだ。一応化粧はしているものの、はっきり言って全然可愛くない。それは山崎本人にも分かっていた。鏡に映る自分の姿を見て、『こんな女とヤる気になれないな…。』と思ってしまった程である。
山崎は土方達の前に戻ってきて、不服そうな顔を浮かべながらボソリと呟いた。
山崎「・・・・んなもんバレるに決まってんでしょ。」
土方「いいからさっさと行け。」
山崎「ぐえっ。」
土方は非情にも山崎の言葉は聞き入れず、その背を蹴って取調室へと無理矢理押し込んだ。その様子を見ていた近藤と総悟は、心にもない言葉で山崎を励ます。
近藤「お前なら出来る!頑張って!」
総悟「頑張って!勇気を出して!」
蹴飛ばされた山崎は蹴られた際に体制を崩し、部屋に入ったと同時にズッコケた。
山崎は古兵衛の前で這いつくばる形となってしまう。恐る恐る顔を上げ、見上げた先にいた古兵衛に笑みはない。冷めた目つきで山崎を見下ろしていた。その目を見た瞬間に山崎の背筋は凍りつく。
(山崎:こっ、恐ェェェェェ!!さっきの奴も恐かったけど、やっぱり本物、何十倍も恐ェェェェェ!!)
蛇に睨まれたカエル、まさしくそんな絵面だろう。
凍てつく目を見て山崎が固まっていると、古兵衛がにっこり笑顔を作って山崎に呼びかけた。
田中「初めまして♡ 君、可愛いね~♡ 名前は?」
山崎「えっ!?お…じゃない、私は…。」
思わず普段使っている“俺”という一人称が出そうになる山崎。慌てて口を噤み、“私”と言い直す。そんな山崎には構わずに古兵衛は笑顔のまま語りかけてきた。
田中「とりあえず座ったら?」
山崎「あ、ありがとう…。」
言われて立ち上がり、静かに椅子へと腰掛ける。