第40章 隠し事は案外バレている。
土方は吸っていた煙草の火を消し、一つ冷や汗を垂らした。
(土方:コイツァ…。本気で気合入れねーと、こっちが掠め取られちまいそーだな…。)
近藤と土方は互いに視線を合わせて頷く。
そして二人一緒に取調室へと入った。
田中「やァ~初めまして。局長サン、副長サン♡」
真選組のツートップが入ってきたぐらいでは物怖じ一つしない。二人は古兵衛の前に置いてある椅子へと腰掛けた。古兵衛は顎を上げて見下ろすような視線を二人に送る。土方は慎重に古兵衛へと言葉を投げかけた。
土方「…単刀直入に聞く。お前ら暁党は近く江戸でテロ活動を画策してやがるな?」
田中「さァ~。俺には何の事だか、さ~っぱり?」
ヘラヘラと交わす古兵衛に、近藤は苛立ちを覚える。右手で拳を作り、机の上にドンと置いた。
近藤「てめぇ…。」
土方「落ち着け近藤さん、奴の挑発だ。乗るな。」
近藤「ぐっ。」
土方は至って冷静に腕組みしたまま古兵衛に向き合う。いや、冷静を保とうとしている、という方が正しいだろうか。土方にも苛立ちは芽生えていた。だが相手に足元を掬われないようにと意識しているのだ。
だがそんな土方の様子を古兵衛は読み取っていた。土方の方へと向けていた視線を一度天井へと向け、考える素振りを見せる。そしてその視線を土方へと戻した。
田中「でも…そーだなぁ~。相手が女の子なら俺も、ちょ~っとは口が軽くなっちゃうかもねぇ?」
土方「!」
古兵衛が何を言おうとしているのかを土方は瞬時に悟った。
土方は目を見開く。古兵衛は表情一つ変えずに土方を見据えていた。
田中「いるらしいじゃん?一人、真選組に女の子がさァ~。その娘(こ)出してよ?その娘相手なら喋ってあげても良いって言ってんだよ。」
近藤「…っ!」
そこまで言われて近藤も気付く。古兵衛が葵咲を指名しているのだと。
二人が何も言えずに押し黙ってると、面白がるように古兵衛はヘラヘラしながら二人の顔を交互に見た。