第4章 自分のドッペルゲンガーじゃなければ多分死なない。
葵咲「そういえばこの間逢った人も知り合いに似てるって言ってたっけな…私に似てる人って案外多いのかな?」
まさか土方の言っていた人物と総悟の言っている人物が同一人物だとは思っていない葵咲は、そんな事を口にした。その言葉を聞いた総悟は、やっぱり土方は葵咲に会っていたのだと確信した。
総悟「そいつってのぁヘビースモーカーのマヨラーじゃねぇですかぃ?」
そう問われて葵咲は、土方と出逢った時、定食屋では大量のマヨネーズがかけられた料理を食べていた事、一緒に歩いていた時は常に煙草を吸っていた事を思い出した。
葵咲「沖田さん、土方さんのお友達ですか?」
やっぱり。そう思った総悟は口を尖らせ、拗ねたような口ぶりで葵咲より少し前を歩きながら言った。
総悟「けっ。そんなんじゃねぇやぃ。」
どうして総悟が急に機嫌を損ねてしまったのか分からなかった葵咲は、足早になった総悟の後を小走りに追いかけた。この人に拗ねていたって仕方がない。そう思った総悟は、機嫌を直して葵咲の方を振り返り、笑顔で言った。
総悟「そんなことより、市村さんのこと聞かせてくだせぇ!」
葵咲「え、私のこと?」
総悟「どうして護り屋なんて仕事してるんですかぃ?危険が及ぶ仕事じゃないですか。」
病気の身体をおして総悟の世話をし、その為に早くに亡くなってしまった姉。護り屋という危険な仕事をする事によって自分の身体を傷付けてしまいそうな葵咲。自分の身体に負荷をかけているという点で、ますます重なってしまった事もあり、自分の身体をもっと大切にして欲しいと思ったのだ。葵咲は総悟の問いかけに、自分の初心を思い出し、戒めるような表情で遠くを見つめながら答えた。
葵咲「…大切な人を傷付けてしまった罪滅ぼし…かな。」
総悟「?」
心ここにあらずといった様子の葵咲。総悟は傍らで葵咲の表情を見ながらも葵咲の言おうとしている意味が分からず、きょとんとしてしまった。そんな総悟の表情に気付き、葵咲は慌てて言った。
葵咲「あ、ごめんなさい、何でもないです。私なんかの話聞いてもつまらないですよ。」
葵咲の心の影の部分に何が隠されているのだろうか?過去に何かあったのだろうか?少し気になった総悟だったが、初対面でいきなり深く踏み込んでも嫌われるだけだと思い、訊くのをやめた。