第40章 隠し事は案外バレている。
近藤の部屋へ入った三人は、畳の上へと腰を下ろす。土方と総悟は近藤の横へと座り、葵咲だけ向かい合う形となった。
四人は雑談などせず、いきなり本題へと入る。近藤は仕事内容を話すが、その内容に葵咲は驚いた表情で復唱した。
葵咲「そよ姫様の?」
土方「ああ。幕府(うえ)からお前への出動要請が出ている。」
近藤「危険な任務になるだろう。…だが、すまない。今回お前には…。」
苦々しい顔を浮かべる近藤。申し訳なさそうに、そして言い難そうに言葉を詰まらせる近藤を助けるように、葵咲がその先の言葉を紡いだ。
葵咲「“拒否権はない”、ですよね。分かってますよ。」
総悟「・・・・・。」
普段なら口を挟むはずの総悟が口を挟まない。それは、肯定の意と捕らえられる。総悟は何も言わずにただただ畳の上へと視線を落としていた。そしてそのまま葵咲が続ける。
葵咲「それが…私が真選組隊士として生き残る唯一の術なんでしょう?」
近藤・土方「!」
葵咲「いや、“真選組隊士になる条件だった”、かな?」
近藤「お前…。」
土方「気付いてたのか。」
近藤は驚きの表情を隠せずにいた。葵咲が全てを見透かしていた事に。土方は一瞬目を見開いたが、その後すぐに元の冷静な表情へと戻っていた。静かに話を聞いていた総悟は深く目を瞑る。
葵咲は真っ直ぐ前を見据え、淡々と言葉を発した。
葵咲「なんとなく、ですけどね。伊東さんとの抗争があった時、相手が浪士とは言え沢山の人を斬りました。本来なら処罰の対象です。その処罰、処刑から免れるよう取り計らって下さっていた事は分かっていましたから。」