第40章 隠し事は案外バレている。
とぼけたような素振りの男を、高杉は冷たい目つきで睨みつける。
明らかに空気が変わった。ピリピリとした空気を感じ取った男は、これ以上高杉の気持ちを逆撫でしないようにと両手を挙げて降参のポーズを取る。
謎の男「アハハ。んな睨むなよ。悪かったって。話すタイミング逃してたんだよ。」
高杉「フン、どうだかな。」
何とか一触即発の事態は避け、話の本題へと入る。男は近くに置いてあった椅子へと腰掛けた。
謎の男「お詫びに例の件、俺がやってやんよ。来週だろ?確か。」
高杉「…ああ。」
謎の男「例のブツは俺が集めてやる。それでチャラ。どう?」
高杉は男の真意を見極めるかのように暫くその目を見つめ、やがて口を開いた。
高杉「・・・・次ヘマしたら俺がお前をたたっ斬るぜ。」
謎の男「へいへ~い。」
「…晋助、本当に良いのでござるか?」
部屋の奥から現れたのは、高杉の側近とも言えるこの男、河上万斉だ。
万斉は疑いの眼差しを男に向けた。それにはこの男も不服そうな面を万斉に向ける。
謎の男「おいおい、信用ねぇなァ~。仕事はちゃんとやるよ。」
河上「ぬしは暁党の幹部でござろう。」
謎の男「あっちは副業。暁党は所謂カモフラージュだぜ?その証拠に、こないだ捕まった時は暁党の情報だけ流して、こっちの情報は一切喋らなかっただろうが。」
河上「・・・・・。」
男の話はどうやら真実であるらしい。万斉は返す言葉なく、押し黙ってしまった。
そんな二人の様子を見た高杉は、ククっと乾いた笑いを漏らし、今度は万斉へと目を向けた。
高杉「万斉、まぁそう気を荒立てるな。こいつの次の働きで評価してやりゃあいい話じゃねぇか。」
謎の男「手厳しいねェ~。まぁ仕事は確実にこなしますよォ~っと。」
男の不敵な笑みは、不気味な程くっきりと暗闇に浮かび上がっていた。