第40章 隠し事は案外バレている。
江戸から少し離れた場所にある下町。
ここは治安が悪く、堅気の者なら身を置くことが躊躇われる町だ。街灯は薄暗く、廃墟もいくつか存在している。専ら攘夷志士達の溜まり場となっていた。
そんな町中を物怖じ一つせず堂々と歩く男がいた。全身黒服に身を包んでいるが、かといって地味というわけではない。むしろ風貌は派手。耳にはいくつものピアスを開け、ネックレスや指輪等のシルバーアクセサリーを身につけている。黒髪に金メッシュのあの男だ。
この町にいるのは大半が攘夷志士。すれ違う攘夷志士達は、ちらりと男の顔を見るなり避けるように道を譲る。この謎の男、攘夷志士の中でも悪名を轟かせているようである。
この町に男のアジトがあった。男はしばらく歩いた後、薄暗い廃屋の中へと足を踏み入れた。
廃屋の中には先客がいた。
薄暗い部屋の中にいる“先客”は、獣のような目を光らせ、謎の男に視線を送る。
謎の男「よォ晋助ェ。あれ?ご機嫌斜め??」
高杉「・・・・・。」
“先客”とは鬼兵隊総督、高杉晋助だった。高杉は壁にもたれ、静かに煙管をふかす。暗闇の中に煙が立ち上った。
話す気配のない高杉を見て、謎の男が続ける。
謎の男「あぁ~、そっかァ。残念だったよねェ~葵咲ちゃん。こっちの手駒にならなくてさァ。」
その言葉を聞いた高杉は眉をぴくりと動かす。
そして鋭い目つきのまま、ゆっくりと口を開いた。
高杉「おい。てめぇ、あいつが真選組にいる事知ってやがったな?」
謎の男「ん~?知ってたけど、何?」
高杉「なんで黙ってやがった。」
謎の男「あれ?晋助、『見つけたら言え』なんて言ってたっけ?」
高杉「・・・・・。」