第39章 探し物は思わぬところで見つかる。
葵咲「うぅ…。」
土方「・・・・葵咲…。」
土方は抱きしめていた腕を解き、葵咲の肩を掴む。
そしてそのまま葵咲を振り返らせ、顎に手を当てて唇を近付けようとした。
振り返ったその時、葵咲の視界に何かが飛び込んできた。
葵咲「…あーっ!!!」
急に大声を上げる葵咲。当然の事ながら、土方は背中が跳ねるように驚く。
土方「えっ!?なっ、何だよ!?」
葵咲「あった!!」
葵咲は土方を押しのけ、突如駆け出した。
置き去りにされた土方は呆然とその場に立ち尽くす。
土方「・・・・・。」
葵咲「あったよ!」
土方「なにが。」
折角の雰囲気が台無しである。ちょっとは空気読めよ。そう思った土方は苛立った様子で葵咲に尋ねた。
だが、そんな土方など気にせず、葵咲は目を輝かせて地面にしゃがみ込み何かを拾い上げる。
そして拾い上げた“何か”を土方に見せた。
葵咲「コレ!!」
それは葵咲達が探していたブレスレットの最後のビーズ。ハート型の飾りだった。
土方「あぁ。そういやそんなのついてたな。」
葵咲「良かった~見つかった!!」
心の底から喜んでいる葵咲の姿を見て、先程の苛立ちは呆れへと変化する。土方は右手で頭をボリボリと掻きながら深いため息をついた。
土方「・・・・ハァ。じゃあ帰るか。」
葵咲「土方さん?」
ここでやっと不機嫌そうな土方に気が付く葵咲。不機嫌になってしまった事には気付いたが、肝心の理由までは分かっていない。でもこの場にいるのは自分と土方の二人だ。自分が何かやらかしてしまった事だけは分かった。
葵咲はおずおずと土方の方へと歩み寄り、顔を覗きこむ。
葵咲「…何か怒ってる?」
流石に本当の事は言えない。先程の自分の行動は、その場の雰囲気に流されてつい手が出てしまったと言えなくもないからだ。
土方はまだ自分の気持ちを整理出来ていない。以前と変化している事は確かだが、本当の気持ちは自分でもよく分かっていないのだ。そんな状態では何も言う事が出来ない。銀時の方を指差し、適当に誤魔化す事にした。