第39章 探し物は思わぬところで見つかる。
思わず探していた手を止めて葵咲の方を見る土方。葵咲は土方と目が合うと、すぐに視線をまた地面へと逸らした。
葵咲「…ごめんなさい。伝えられてなくて…。」
俯きながら言葉を押し出す葵咲を見て、先日の葵咲の発言を思い出した。
土方「この間、病室で言おうとしてたのはそれか?」
葵咲「え?」
土方「ほら、俺を引き止めた事があったろ。」
葵咲が入院していた時の話だ。
葵咲は何か意を決したような顔をして病室から出て行こうとする土方を引き止めた。
その時は桂の腕が限界に達していた為、葵咲の方から話を逸らしたのだが、話が中途半端になっていた事を土方は思いだしたのだった。
土方からの指摘でその時の会話を思い出した葵咲だったが、少し眉根を寄せて曖昧な返事をする。
葵咲「あ、あぁ…う、うん。」
土方「?」
そしてまたその場に沈黙が下りた。二人は再びビーズ探しへと戻り、地面に視線を落とす。だが黙々と静かに作業に戻るのではなく、少し遠慮がちに土方が質問をした。
土方「仲、良かったのか?あいつと。」
葵咲「・・・・うん。」
会話が思うように続かない。深く突っ込んで聞いて良いものかを図りかねた土方もまた、言葉を詰まらせてしまう。また沈黙が降りてしまうかと思ったが、今度は葵咲が言葉を紡いだ。
葵咲「私はいつも、高杉の後を、背中を追ってたから。いつも見てたから。だから…高杉が考えてる事、何となく…分かる。」
土方「・・・・・。」
静かに語られる葵咲の過去に、言葉を挟む事無く耳を傾けた。
葵咲「私ね、松陽先生…あ。」
感情が入ってしまうが故に、つい昔の呼び名が口を出る。だがそれは決して宜しくはないだろう。仮にも過去に処刑された罪人だ。聞こえによっては攘夷派とも取れる呼び方である。
いくら天然の葵咲といえど、今真選組隊士として活動している身として、それは分かった。だから途中で言葉を止めて、口を手で押さえたのだった。
そして慣れない様子で言い直す。