第4章 自分のドッペルゲンガーじゃなければ多分死なない。
葵咲は護り屋の仕事をしてくる事を妙に伝える為に一度家に入った。総悟はとても嬉しそうな表情で葵咲が出てくるのを玄関口で待っている。その様子はまるで初デートが待ち遠しくて、待ち遠しさのあまり待ち合わせ場所に早く着きすぎ、ただひたすら彼女を待つ彼氏のようだ。
家から出てきた葵咲は、お待たせしてごめんなさいと総悟に言う。それに対して全然待っていないと言う総悟は、やはり傍から見れば初デートに来た思春期の男子そのものだった。
葵咲に今日の予定を聞かれた総悟は、パトロールの仕事に付き合って欲しいと伝え、江戸の町を二人で歩くことにした。ただそわそわして何も言葉の出てこない総悟は、必死に会話を探す。そんな様子に気付いていない葵咲は、総悟に気遣う事もなく自分の中にあった疑問を総悟に投げかけた。
葵咲「沖田さんって危険なお仕事なさってるんですか?」
総悟「どうしてですかぃ?」
葵咲「用心棒の依頼をされたので…。」
葵咲は先日、土方に言われた『客は選べ』という言葉を思い出したのだ。もし犯罪に手を染めるような依頼だったら断ろう、そう思っていた。そんな葵咲の心情を知らない総悟だが、別に隠す必要も嘘をつく必要もないので、自分のしている仕事について正直に話した。
総悟「俺、真選組に所属してるんです。」
葵咲「あの警察の?へぇ!お若いのに凄いんですね。」
葵咲は総悟の制服姿を見て、この服装が真選組の制服なのだと初めて知った。先日桂と一緒に居た時は暗くてあまりよく見えなかったし、土方は私服姿だった。ちゃんと近くで真選組と向き合うのは初めてだった。そして総悟の服装を見て気が付いた。そういえば先程妙の元にバーゲンダッシュを持ってきた男も同じ服装をしていた。あの男も真選組なのだろうか、その事を尋ねようとした葵咲だったが、それより先に総悟が口を開いた。
総悟「お若いって…姉う…いや、市村さんだって十分若いでしょ。」
あまりにもミツバにそっくりな葵咲に対して、思わず「姉上」と呼んでしまいそうになる。総悟は急いで名前に訂正した。そして若いと言われた葵咲は総悟の年齢を尋ねた。
葵咲「沖田さん、おいくつですか?」
総悟「俺ァ18です。」
葵咲「わっ。私より大分若い…。」