第38章 友達の友達は友達って考えてる奴の方が実は意外と友達が少ない。
銀時はビル内の階段を上りながら、葵咲に問いかける。
銀時「どのへんだ?」
葵咲「私達が戦ったところ。」
二人はそれ以上は何も語らず、黙々と階段を上っていった。葵咲の示す場所、“私たちが戦ったところ“。それは葵咲と高杉が一戦交えた場所だ。
最上階へと上がってきた二人は地面へと目を凝らす。
銀時「探すったってこの薄暗いビルじゃ見つからねーだろ。」
葵咲「だから私一人でいいって言ってんじゃん。」
どうやら葵咲は何かを探す為にこの場所へと再び訪れたようだ。だが勝手について来ておいて文句をこぼす銀時に、葵咲は少し苛立った様子だ。地面に向けていた目を銀時へと向けて、ムッとした表情で返す。
そんな葵咲の顔を見た銀時は、一つため息を零してから、地面へとしゃがみこんで辺りを見回し始めた。
銀時「…ハァ。分かったって。手伝やいいんだろ。」
葵咲「だから嫌なら別に…。」
元々葵咲は一人で“何か”を探しに来るつもりだったのだ。それを嫌々手伝われても気分が悪い。こっちからは頼んだわけではないのだから。
葵咲は銀時を帰そうとするが、銀時もまた意地になったようにムっとした様子でしゃがんだまま葵咲の方に目を向ける。
銀時「別に嫌じゃねーよ。お前はもっと人に…。」
『頼れ。』、最後の言葉を言う前に葵咲の方へと視線を移したその時、葵咲の頭上からコンクリートの塊が落ちてきそうになっていたのが目に入った。銀時は慌てて葵咲の方へと飛び込む。
銀時「危ねぇ!!」
葵咲「え?」
間一髪。葵咲は難を逃れることが出来たが、二人はその勢いで地面へと倒れこみ、銀時が葵咲に覆いかぶさる形になった。
葵咲「つっ!!」
銀時「おい葵咲、大丈夫か?」