第37章 自分を狙っている暗殺者は一人だけとは限らない。
土方「くそっ、何喋ってんのか、ここからじゃ聞こえねぇな。」
これには総悟も静かに頷く。二人を尾行している土方と総悟は銀時達から一定の距離を保っている。小声で交わす会話など聞こえる筈もなかった。
葵咲「それにね…。」
銀時「やめとけ。」
葵咲「え?」
何か自分の意見を主張しようとした葵咲だったが、銀時はそれを遮った。
銀時「高杉(アイツ)が昔のまんまの“晋ちゃん”(アイツ)だって考えは持たねー方がいいって事だ。」
葵咲「!」
実際、銀時や桂も過去殺されかけた事がある。高杉は変わってしまったのだ。今はもう、攘夷戦争を共に駆け抜けた戦友でもなければ、松陽の学び舎で共に苦楽を味わった学友でもない。それを念頭において置かなければ、殺られるのは自分達なのだと銀時は説いてみせた。
銀時「確かにお前を殺さなかった事には何か意味があんのかもしれねーけど、まだ利用価値がある、そう考えて生かされてる可能性だってあんだろ。」
葵咲「・・・・・。」
銀時の考察も間違ってはいない。納得出来る言い分だっただけに葵咲は言葉を失い、下を向いてしまった。
銀時は少し寂しそうな顔を浮かべて葵咲に声を掛ける。
銀時「…信じる信じねーはお前の自由だけどよ。油断だけはすんじゃねーぞ。」
葵咲「…う、うん。」
葵咲が頷いたところで、銀時は更に言葉を付け加えた。
銀時「勿論、高杉だけじゃねぇからな。」
葵咲「え?」
今度は銀時が考え込むように視線を逸らした。