第37章 自分を狙っている暗殺者は一人だけとは限らない。
店を出た二人は再び大通りを歩く。少し歩いたところで公園の前にさしかかった。
そこで銀時が何かを思い出したように声を上げ、足を止めた。
銀時「あ。そういやお前、この間何言いかけてたんだ?」
葵咲「え?」
この間とはいつの事だろう?銀時は毎日見舞いに訪れてくれていた為、銀時の指す“この間”が分からずにいた。葵咲がぽかんとした顔になっていたので銀時は更に言葉を付け加える。
銀時「俺とヅラに何か意見訊きてぇとか言ってただろ?」
葵咲「あっ!」
桂が見舞いに訪れたのは後にも先にも一度だけ。あのかくれんぼをした日だけだった。それでようやく銀時の指す“この間”がいつか分かった。
だが、葵咲は話すか否かを少し躊躇うように視線を足元へと落とした。
葵咲「・・・・・。」
銀時「ここじゃ言いにくい事なのか?」
葵咲「いや…。」
言いよどむ葵咲を見て、銀時が気遣う。だが、葵咲は少しの間を置いて、言葉を押し出した。
葵咲「高杉は…どうして私を…殺さなかったのかな・・・・?」
銀時「!」
葵咲「高杉程の実力者が…あんな至近距離で殺しそびれるなんてこと、あるのかなって…。」
銀時「・・・・・。」
葵咲の言い分は最もかもしれない。高杉は相当な実力者だ。その高杉が標的のすぐ背後にいて殺しそびれるなんて事があるのだろうか?本当に殺す事が目的だったなら、心臓一突き等造作もないことではないのではないのか?
銀時も考えるように右手を顎へとやった。この課題について真剣に考える二人だが、周囲にあまり聞かれて良い話題でもない為、自然と小声になっていた。