第4章 自分のドッペルゲンガーじゃなければ多分死なない。
先日の一件について一切聞いていない新八だったが、今の銀時の発言を聞いて、葵咲が今回万事屋を訪れた時、銀時は沖田の姉似の葵咲に驚く様子のなかった事、二人は初対面ではない雰囲気だった事を思い出し、志村家で銀時が以前から葵咲を知っている風だったのは、やっぱり万事屋に来る以前から銀時と葵咲は知り合いだったのだ、と勝手に想像した。
総悟「屯所で人員を募集してるんでさぁ。女中を一人。」
銀時「嘘つけ。女中に何の仕事させるつもりだよ。枕営業か?男(ヤロー)の巣窟に若い女一人放り込むなんざ危険過ぎて出来るワケねーだろ。」
訝しげな表情で銀時が総悟に言った時、総悟の背後、玄関の方から男の声が聞こえてきた。
土方「全くだ。」
突如現れた土方に驚いた新八は、思わずその驚きが声に出る。
新八「土方さん!いつのまに…。」
新八の問いかけには答えず、土方は総悟の方を向いて続けた。
土方「おい総悟、何勝手な真似してやがんだ。俺達真選組は今の人員で十分だ。ましてや女中なんざ必要ねぇだろ。」
近藤の話を聞いても土方は顔色一つ変えなかった事を思い出し、総悟はムッとした様子で土方を睨みながら言った。
総悟「土方さん、アンタ、あの娘のこと知ってたんじゃねぇですかぃ?」
一触即発の雰囲気の総悟を煽るように、銀時は右手で鼻をほじりながら、また、それとは反対の手で土方を指差しながら言った。
銀時「コイツが一番に枕営業申し出てた。」
総悟が爆発するより先に土方の怒りが爆発した。土方は銀時の胸倉を掴みながら抗議した。
土方「アレは違うっつってんだろうがァァァ!!」
銀時「えぇ~?アレって何のことぉ~?ぷぷっ。」
銀時は土方から目を逸らし、とぼけてヘラヘラ笑いながら土方をからかった。
土方「てんめぇ!!」
怒りが頂点に達した土方だったが、これ以上下手に反論して墓穴を掘ったり、罠にはめられても適わないと思い、銀時を掴んでいた手を放し、万事屋から出て行った。立ち去る土方を見た後、銀時は総悟に向かって言った。
銀時「ま、何にせよ、鬼の副長さんがこう言ってるんだ。交渉は不成立な。さっ、帰った帰った。」
総悟「・・・・・。」