第36章 クーリングオフがきかない商品もあるから注意しろ。
一瞬でパフェをたいらげる葵咲。その様子を見て、この店に入った当初の葵咲の発言を思い出し、この勢いならケーキ全種類制覇も可能なのではと思ったのだった。
葵咲は至って平然と答える。
葵咲「デザートは別腹ってやつだね。」
銀時「別腹にしても食いすぎだろ!それ何皿目!?つーかパフェは別料金なんだよ!ちょっとは味わって食えよ!!」
銀時の指摘に対し、ハッとした表情になる葵咲。そう、パフェは別料金だった事を思い出したのだ。右手で口元を押さえながら、申し訳なさそうに謝った。
葵咲「あっ…。ごめん、にぃちゃん…。」
銀時「“にぃちゃん”って何!それ絶対“兄ちゃん”じゃないよね!?明らかニートからだよね!?さっきからすげー腹立つんだけど!!」
どんな話の展開になっても見下されてしまう銀時。どうしようもない苛立ちを表に出しながらも、葵咲の顔を見て何かに気付いたように注意を促した。
銀時「…ったく。ほら、んな慌てて食ってっから口にクリームついてんじゃねーか。」
葵咲「あ、ごめん。」
葵咲の口の右端にクリームがついている。銀時は自らの口の左端を指差し、葵咲から見て鏡のようになるようにクリームのついている位置を示したが、葵咲は上手く取る事が出来ないでいた。
見るに見兼ねた銀時は、左手を伸ばして葵咲の口元からクリームを取り除く。そしてそのままクリームのついた親指をペロリと舐めた。
葵咲「あっ!ちょ!」
銀時「やっぱ甘いもんは最高だな。…ん?なっ、なんだよ。」
顔を赤くして銀時を凝視する葵咲を見て、銀時もまた顔を赤くする。自分がバカップルのような仕草をしてしまっていた事に気付いたのだ。
口をもごもごさせてフイっと視線を外す銀時。それに対して葵咲は顔を真っ赤にして怒りを声に出した。