第36章 クーリングオフがきかない商品もあるから注意しろ。
葵咲「くっ、やるわね偽者。その返し、銀ちゃんを完コピ…。」
銀時「だから偽者じゃねーっつってんだろ!しつけーよ!!つーか仮にそれがホントだとして偽者のメリットは!?俺に化けてお前に飯奢って そいつ何得!?」
そこまで言ってやっと葵咲が納得したように折れた。
葵咲「そっか。それもそだね。じゃあなに、熱でもあるの?」
銀時「さっきから何なのお前!俺の心のHP削るの趣味なわけェェェ!?」
やっとの思いで葵咲を納得させた銀時だったが、葵咲の言葉の刃に半分涙目だ。
葵咲「だって、銀ちゃんと言えばニー…」
銀時「だからニートじゃねぇっつってんだろ!それもしつけーよ!!」
これ以上遠まわしに言っても葵咲には伝わらない、むしろ自分が傷付けられるだけだと判断した銀時は、少し照れくさそうな顔をしながらぼそっと呟くように言った。
銀時「…退院祝いしてやるっつってんだよ。こないだ良い仕事して結構金入ったしな。」
葵咲「えっ?」
こないだの仕事とは、コミック第29巻、253訓のお話。大企業の社長の浮気をもみ消した件だ。その台詞を聞いた葵咲もまた、少し照れたように頬を赤らめる。
葵咲「あ、ありがとう。」
そして葵咲は空を仰ぎ見ながら呟いた。
葵咲「…明日は洗濯物外に干すのやめた方が良いかな。」
銀時「? なんでだよ。」
葵咲「だって雨…、いや、雪が降るでしょ。」
珍しい出来事があれば翌日は雨が降る。迷信だと思われるが、その謂れを知っている者は多いだろう。
銀時はその意味をすぐさま理解し、ふてくされたような顔で葵咲から視線を逸らした。
銀時「…もう二度と奢るなんて言わねー。少なくともお前には。」
なんだかんだと揉めた二人だが、折角の心遣いを葵咲は受け取り、銀時に提案する。
葵咲「じゃあさ、私行きたいお店あるんだけど、いいかな?」
銀時「しゃーねぇな、付き合ってやるよ。」
葵咲「何その上から目線。腹立つな~。」
銀時「俺が金出してやるんだから上からでいいだろ。」
二人はゆっくりと歩きながら、葵咲の示す場所へと足を向けた。そしてそんな二人の後を追っていた土方と総悟の二人もまた、その方角へと足を向ける。仲良さ気に肩を並べて歩く葵咲と銀時の姿を後ろから眺めていた二人は、面白くなさそうな顔で睨んでいた。