第36章 クーリングオフがきかない商品もあるから注意しろ。
大通りをゆっくり歩いていた葵咲と銀時。銀時は歩きながら葵咲に問いかけた。
銀時「どっかで飯でも食ってくか?」
葵咲「でも早く帰らなきゃ仕事が…。」
労災事故の入院とは言え、三週間も仕事を休んでいる。自分の溜め込んでしまっている仕事が気になっている葵咲は、右手を頬に当てながら悩むような声を出した。
だが、そんな葵咲に対して銀時はため息を漏らす。
銀時「だーから、オメーは気負いすぎなんだって。今日が退院なんだ。今日ぐれーゆっくりしたって誰も文句言やしねーだろ。」
荷物を持っていない方の手で葵咲の頭をポンポンと軽く撫でる銀時。だが、葵咲はまだ唸るように下を向いている。銀時は寄り道を促すように言葉を繋げた。
銀時「ほら、何が食いてぇ?奢ってやるよ。」
葵咲「え・・・・えぇぇ!?あ、貴方…誰!?」
銀時「は?」
突如驚いて身を離す葵咲。その行動には意味が分からないといった表情で銀時はその場で固まる。
葵咲「だって!銀ちゃんがご飯奢るなんてありえない!偽者でしょ!?…もしや、高杉が変装を…?」
銀時「んなわけあるかァァァァァ!!高杉(アイツ)そんなキャラじゃねーだろ!!つーかありえないって何だよ!」
折角プレゼントした善意の台詞が、受け取られずにそのまま地べたに叩き落とされた感じだ。
銀時が怒るのも当然だろう。だが、葵咲は一歩も引かず、何か見透かしたような表情で銀時を睨みつけながら笑みを零した。
葵咲「フッ、残念だったね、偽者。銀ちゃんは奢られても決して奢るような男じゃない!」
銀時「何勝ち誇ったような顔してんの!?何嘘を見破りました的ドヤ顔してんの!?違うから!すげー腹立つんだけど!俺だって奢る時ぐらいあらぁ!人聞き悪い事言ってんじゃねーよ!」
お互い一歩も譲らない攻防戦。葵咲は頬に一粒の汗を垂らしながら悔しそうな顔を浮かべる。