第35章 ニート街道まっしぐらな奴ほどニートじゃないって言い張る。
そして総悟は土方の背中をじっと見据える。その視線は睨むのではなく、何かを見極めるかのようにただただじっと見据えていた。先程も記述したように、土方が葵咲を気に掛けているのは確かだ。だが、どこまでなのか?恋愛感情はあるのか?その事を確かめる意味でも聞いてみた一言だったのだ。
少し前を歩いていた土方だったが、振り返りながら総悟に目を向けて言葉を続けようとする。だがここで葵咲の病室へと到着し、二人は病室の戸を開けた。
土方・総悟「…あれ?」
部屋の中を見た二人は話を止めて目を瞬かせる。ベッドはもぬけの殻。そこに葵咲はおらず、荷物すらない。
二人が立ちすくんでいると、たまたま後ろを通りがかった看護師が二人に声を掛けた。
「市村さんならもう退院したよ。」
土方「は?」
思わず振り返って声を荒げる土方。その剣幕に看護師は特に驚く様子もなく、淡々と答える。
「銀髪のお侍さんが迎えに来てね。ついさっきだから…まだそんなに遠くには行ってないんじゃないかねぇ。」
土方・総悟「・・・・・。」
“銀髪の侍”について、その正体に想像がついた二人は、かなり苛立った様子で言葉を詰まらせた。